幼少期のストレスが成長後に悪影響を与える
幼少期のストレスがのちの認知機能低下を引き起こす細胞学的問題を引き起こすことが報告されている。
カリフォルニア大学アーバイン校のBaram TZ教授らは、ラットを用いた研究で、幼齢期のストレスを与えることにより記憶のコード化、記憶の貯蔵、想起に関わる海馬の脳細胞同士のつながりに遅延性の障害が生じて緩徐に進行することを示した。これら幼齢期にストレスを受けたラットでは、学習・記憶の細胞学的基礎と考えられている脳細胞間のつながりが、これらの壮齢ラットでは不完全になっていることがわかった。脳細胞の電気的活性を記録すると、幼齢期にストレスを受けた成体ラットは若齢期には正常であったが、壮齢期に達するにつれて非常に不安定となった。
Baram教授は、幼齢期にストレスを受けて認知機能が低下したラットには、脳細胞のつながりに具体的な障害が認められたとし、この障害に関与する特定の分子を同定し、これを防ぐための薬剤をデザインすることが可能と考えられるとした。
(以上は、Medical Tribune 2005.1.20よりの引用です。)
ここで強調したいことは、幼少期のストレスが、中枢神経系の発達とそれに基づく生理的機能にまで影響を与えているということです。すなわち、脳細胞の構築に影響が及び、脳の機能に影響が生じるわけですから、成長後にストレスがなくなったとしても、問題は一生残ってしまうわけです。しかも、更に問題なのは、これらの中枢神経系の発達障害が成長したから具体的な問題となってくるという点です。問題が表面化した時点では、根本的な問題解決が困難であるという点です。
統合失調症や気分障害のような思春期以降に好発する精神疾患に対して、成因として神経発達障害説がありますが、そのような問題とも関連する知見と考えています。逆に、それに対して、精神疾患予防の新たな可能性も見えてくるわけです。
近年、精神疾患の一次予防(発生予防)についての視点がより重要となっています。その観点からも幼少時期の精神発達は重要であることを認識する必要があります。