1.ストレスとはストレスとは、感情的で身体的に感じる緊張の感覚である。
ストレスは特別な個人的状況で生じる。
ストレスを感じる状況は個人によって異なる。
ストレスの原因となるもの(肉体的・精神的・物理的刺激)をストレッサーという。
ストレス・マネジメントはストレス状況での緊張を弱めたりコントロールする。1)良いストレスと悪いストレス
適度のストレスは健康によいが(良いストレス)、強すぎるストレスや持続的でなかなか取り除けないストレス(悪いストレス)は健康を損ねる。ストレス自体は良くも悪くもないが、ストレス要因とストレス強度によって健康に与える影響が異なってくる。
2)ストレス要因(ストレッサー)とストレス強度物事に順調で何も不満はなく、充実した生活を送っていてもストレスはかかっている。もちろん、不満足な状況や辛い状況、心配事の多い状況ではストレスを感じやすい。我々は日常生活でストレスに曝されていることを自覚する必要がある。その場合、ストレスの原因(ストレッサー)とストレスの強さが問題となる。
3)ストレスの特徴(1)体のストレス(疲労)は回復しやすいが、心のストレス(疲労)は回復しにくい。
(2)ストレスには時間の要素が大切である。一つのことを長時間おこなわず、質的に異なる作業 に切り換えることでストレスの蓄積を防ぐ。
(3)ストレス耐性にも慣れの現象がある。徐々に仕事を強めていけば、ストレス強度に適応しや すい。
2.ストレスと心身機能
1)ストレス反応:
汎適応症候群(セリエ);ストレスの生物学的反応 @警告反応期: ショック相:体温の下降、血圧低下、血糖値の低下、アチドージス、 胃腸粘膜のびらん 反ショック相:ショックに対する防衛反応 体温、血圧、血糖値の上昇 A抵抗期: 適応状態を維持 B疲労困憊期: ストレッサーが強すぎたり、ストレスが長期にわたると、生体は適応力を失う。 体温、血圧の降下、胸腺リンパ器官の萎縮、ストレス病を発症する。
○生体には、ストレッサーに対して内部環境を一定に保とうとする働き(ホメオターシス)が機能している。
2)ホメオスターシスの機能:
1)サーカディアンリズム(生体リズム)
2)ストレスと身体機能(自律神経系、免疫系、内分泌系)
3)ストレス過剰と心身への影響
3.ストレスのもたらす健康問題
1)身体化:心身症(高血圧症、気管支喘息、胃潰瘍、過敏性大腸炎、蕁麻疹)、 虚血性心疾患、脳血管障害 2)心理化:神経症、うつ病 3)行動化:不登校、欠勤、事故、アルコール依存、ギャンブル
4.ストレス対処行動(stress coping behavior)
1)消極的なストレス対処行動:
アルコールや薬物に依存
ギャンブル嗜癖
登校拒否、出社拒否
2)積極的なストレス対処行動:現実的な問題解決策を考え、実際に問題を解決する。 ストレス・マネジメントが有効である。 ○ストレス・マネジメントは感情状態や身体状態を変化させる努力が必要である。 ○ストレスの強さと変化させたいという願望とが、どのように心身状態の変化する かを決定する。(1)現在のストレスを評価する。 ○ストレス度:ストレス尺度表(社会的再適応評価尺度) ○個人の態度(心構え):ある状況やある感情状態がストレスになるかどうかに影響を 与えている。マイナス思考の態度では、多くの状況がストレスの満ちたものになる。 マイナス思考はストレスを引き起こす。 ●ストレス状態に陥りやすい性格傾向: ●神経症的性格(不安が強く、情緒不安定、ストレッサーに過敏) ●失感情症(アレキシチミア)(自分の感情の変化や心的葛藤に気づきにくく、 その表現力が乏しい)→心身症になりやすい。 ●タイプA行動パターン(野心的、攻撃的、競争心に富む、時間に対して切迫感 を持つ、仕事や対人関係で緊張を持続)→虚血性心疾患にかかりやすい。 ●うつ病親和性格(几帳面、潔癖症、完全癖、中途半端が出来ない、責任感が強い、 対人配慮が強い) ●燃え尽き症候群○身体的健康:ストレスへの抵抗力を高め、ストレスの強い状況にも対処できる。
身体的抵抗力の低下は感染症にかかりやすくする。
食生活の問題:偏った食事、不十分な食事、不規則な食事など。○身体的活動:不十分な身体活動は身体をストレス状態にする。
一貫した身体活動は、うつ状態を減らすのに役立つ。
身体運動は健康な感覚を強める作用がある。○支える体制:家庭や社会での人間関係がうまくいっていることはストレス対処にも重要な働きをしている。
個人のストレス対処能力を向上させても、支える体制がなければうまくストレスを乗り切れない。
○リラクゼーション:趣味やリラクゼーションの方法を持たない人は、ストレスから抜 け出す手段を持たないため、ストレス状況をうまく取り扱うことが出来ない。
(2)ストレス・マネジメントのプログラム
●心構え:
○プラス思考をする。
○マイナス思考になっている問題をプラス思考に変える。
○見方を変えて、プラス思考的に自分自身に語りかける。○物事をマイナスに考えることを止める努力をする。
○楽しいことを考え、行う。
●身体的活動:
○自分に合った身体的活動を始める。
○自分に合った身体活動の時間、種類、頻度、強さなどを決める。
●栄養:
○バランスの取れた食事、十分な量の食事を心がける。
●社会的支え:
○社会的活動を維持するように努力する。
○他人に関心を持ち、心を開き、手を差し伸べる。
●リラクゼーション:
○リラクゼーションの技術を利用し、緊張を緩和する。
一つないし二つのリラクゼーション法を身につける。
○自分の興味や趣味のための時間を作る。
○自分のための充電時間を作る。(3)ストレス解消法(3R):
Rest(休養):のんびり過ごす、良質な睡眠の確保
忘れる、他のことをする、
Recreation(気晴らし):感性の刺激、五感の回復
転換をすること;作業と異なった心身の部分を働かせる。
(積極的休息)
情緒面での転換(楽しみ、笑い、喜びなど)
Relax(くつろぎ、骨休み):緊張の緩和(4)タイプA行動とタイプB行動について:
FriedmanとRosenmanが中年期男性を対象にして行った、冠状動脈疾患の危険因子に関する長期縦断研究より見出した人格行動パターン
●タイプA行動パターン:
競争的、達成志向が強い、攻撃的、いつも時間にせき立てられている
冠状動脈疾患の発病率や死亡率がタイプB行動パターンよりも2倍以上も高い。
タイプA行動パターンが冠状動脈疾患の発作や発病の危険因子である。
●タイプB行動パターン:
のんき、気長でリラックスしている
人生を楽しみ、生活の質に関心を抱く
5.ストレスと危機状況
1)危機とは:ストレス状態を引き起こす出来事、または知覚される脅威によって情緒的に窮地に立たされている状態を危機(crisis)という。
(1)発達的危機(成熟的危機):(=心理社会的危機、エリクソン) 人がその発達の各段階において、社会的環境からの要請に適応しょうとする心理学的努力で ある(エリクソン)。 各発達段階で誰もが受ける、社会的要請に基づくストレス状態と緊張を意味する。 (2)状況的危機:個人の心理的均衡や家族の恒常性を乱すような状況。
愛と依存の対象喪失(親の離婚、死別など)
受験の失敗、重い病気に罹患、自然災害(地震、大洪水)、飛行機事故など
●外傷後ストレス障害(PSD, Posttraumatic Stress Disorder)
2)危機の特徴:
(1)急性かつ一時的なもので、短くて1週間、長くて6-8週間続く。
(2)行動が著しく変化し、いつもに比べて非効果的な行動をする。
(3)人生の重要な目標がおびやかされると知覚し、不安や恐れを感じる。
(4)危機的状況の知覚は、その人独自のものである。
(5)危機に陥っている人は、不安・緊張などの身体反応を示す。3)危機の段階(カプラン):
第一段階:緊張が初めて高まる時期
いつものやり方で危機の解決をはかろうとする。
第二段階:緊張が高まり、解決のための努力が失敗する。
第三段階:解決に失敗した結果、抑うつ状態に陥る。
第四段階:精神的な健康が損なわれ、精神的崩壊・不適応行動が出現する。4)危機介入:
危機は、適切に処理することにより、当事者の成長につながり、精神的健康を高めることが できる。 危機介入とは、危機状況に陥った人が速やかに危機から脱出できるように援助することで、 専門家による一つの治療技法である。●いのちの電話 ●救急精神医療