精神分裂病の病名変更について

  • 1.病名変更の背景
  • 2.病名変更意見募集の結果
  • 3.統合失調症へ変更
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    1.病名変更の背景:

     精神分裂病の疾病概念は、1899年にドイツの精神医学者クレペリン(E. Kraepelin)がそれまでの精神病を経過と予後によって二分し、躁うつ病と並ぶもう一つの精神病として早発痴呆の名前で疾患単位を独立させたところから始まっている。そのため、慢性経過をとり痴呆に至る予後のよくない病気という暗いイメージが定着してしまった。その後、1911年スイスの精神医学者ブロイラー(E. Bleuler)によって早発痴呆とよばれた病態は心理学的(精神病理学的)特徴によってとらえ直された。種々の心的機能の分裂(思考、感情、体験の間の相互の分裂、精神機能の要素的構成の分裂、人格の構造連関の喪失など)が注目され、初めて精神分裂病(Schizophrenie)という名前が用いられた。ブロイラー自身は精神分裂病の病態を心理学的(精神病理学的)にとらえようと努力したが、彼の提唱した病名が一般に使用されるようになり、クレペリン以来の暗いイメージが精神分裂病の病名に重なり、社会的偏見を増強する結果となった。

     Schizophrenieの病名は、schizo(=分裂)、phrenia(=精神状態)の造語であり、統合失調症(精神分裂病)の心理学的特徴である心的機能の分裂(=精神機能の統合性の破綻)を意味していたが、あくまでも機能の特徴を表現していたにすぎない。しかし、日本語の病名「精神分裂病」は、時に精神(理性)の分裂した人間という病者の人間的価値をおとしめ非人間的存在といった差別的意味合いをもたらしている。実際は、確かに病状が悪いときは、精神機能はまとまらず滅裂であったりするが、病状が安定すれば(統合性が回復すれば)、病気による問題は残るにしても普通の人間である。

     1950年代に抗精神病薬が導入され、その後の著しい薬物療法の発展や、様々な社会復帰療法の導入などにより分裂病者の社会的予後は著しく改善してきたにもかかわらず、先進諸国の中では日本だけが未だに長期在院患者が精神病床を占めていいるのである。そのほとんどは統合失調症(精神分裂病)患者である。それらのうち2割ないし3割は社会的入院であると見なされている。その背景として、社会復帰体制の貧弱な日本の精神医療体制の問題、家族の受け皿機能の低下があげられているが、加えて、社会のこの病気に対する偏見も大きな問題である。

     この病気に対する社会的偏見を少なくするために、日本精神神経学会でも病名変更について以前から検討していた。そして、(1)スキゾフレニア(原語のまま)、(2)クレペリン・ブロイラー症候群、(3)統合失調症の3候補に絞って検討を続けていた。

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    2.病名変更意見募集の結果:

     2001年10月に、全家連と日本精神神経学会の連名で、新聞紙上と全家連のホームページで、精神分裂病の名称変更の意見募集を行った。全家連の発表によると、2001年10月25日の締め切りまでに、全国各地から寄せられた意見は、有効回答数2368通であった。精神疾患をもつ方や、その家族の方を中心に、各年代にわたって幅広く意見が寄せられ、男性よりも女性の方がやや多い傾向であった。

     その結果は、

    (1)統合失調症 1010通(42.7%)

    (2)スキゾフレニア 259通(10.9%)

    (3)クレペリン・ブロイラー症候群 201通(8.5%)

    (4)その他の名称 898通(37.9%)

    4割以上が「統合失調症」を支持し、その理由として、「日本語でわかりやすく、覚えやすいから」が多く、「症状をうまく表現している」という意見があった。

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    3.統合失調症へ変更:

     平成14年8月に開催された日本精神神経学会総会で「精神分裂病」の病名は正式に「統合失調症」に変更された。これを契機に、この病気に対する誤解や差別が是正され、日本の精神医療がよりよいものになり、よりよい社会になるように関係者ならびに一般市民は努力していかなければならない。

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