脳内の薬物作用機序について

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  • T.抗精神病薬の作用機序(効果と副作用)

    1960年代後半あるいは1970年代になって、抗精神病作用を持つ神経遮断薬の主要な薬理学的特徴は、ドーパミン2(D2)受容体を遮断する作用であることが知られるようになった。

    同時に、この作用が、抗精神病効果のみならず望ましくない副作用の作用機序にも関係していることがわかった。

    抗精神病薬の治療作用は、特に中脳辺縁系ドーパミン経路でのD2受容体の遮断により、この経路における過活動を抑制することにより生じている。過活動は精神病の陽性症状と関係していると考えられている。

    抗精神病薬は投与されると、脳全体に影響を及ぼすため、中脳辺縁系のD2受容体の遮断だけでなく、中脳皮質ドーパミン経路でもD2受容体の遮断が生じ、陰性症状や認知症状を引き起こしたり、増悪したりする。

    黒質線条体ドーパミン経路でこれらのD2受容体が遮断されると、パーキンソン病と非常によくにた運動障害を生じる。これは薬物誘発性パーキンソン病と呼ばれている。黒質線条体経路は錐体外路系の一部で、この部位のD2受容体遮断に関連した運動系の副作用は、錐体外路症状(extrapyramidal symptoms(EPS))とも呼ばれる。

    黒質線条体ドーパミン経路のD2受容体が長期に遮断されると、遅発性ジスキネジアtardive dyskinesiaとよばれる運動障害を引き起こすと考えられている。

    漏斗下垂体ドーパミン経路のD2受容体が遮断されるとと、血漿プロラクチン濃度が上昇し、高プロラクチン血症が出現する。これは、乳汁分泌や無月経などの問題を引き起こす。

    U.PETによる脳内の薬理動態の解析

    1.PETによる生体脳内での受容体イメージング

    1980年代になり、初めて薬剤による受容体の占有率が測定された。その結果、薬剤が受容体にどの程度結合しているかによって薬物効果を評価する一つの指標となった。

    薬物による受容体占有率を啓示的に測定することにより、これまでの血中濃度よりも直接的に薬物の作用する受容体部位での薬物半減期を測定することが出来るようになった。

    その結果、抗精神病薬の脳内半減期は血中濃度の脳内半減期よりはるかに長いことがわかってきた。

    2.統合失調症における薬物動態

    抗精神病薬が神経細胞間のシナプスにおける神経伝達物質の一つであるドパミンの受容体(ドパミンD2受容体)を遮断し、ドパミンによるシグナル伝達を遮断することで抗精神病作用をもたらしている。

    ドパミン神経伝達の異常が幻覚や妄想などの精神病症状の発現に関係していることは、アンフェタミン(覚醒剤)やコカインなどの薬剤がドパミン伝達を強める事実からも知られている。

    3.ドパミン受容体

    ドパミン受容体には5つのサブタイプがあり、これまでは陽性症状(幻覚・妄想)と関連の深いD2受容体に注目されてきた。

    D2受容体は線条体に多く存在していて、これまで線条体を中心に研究されてきたが、D2受容体は密度は低いが大脳皮質にも存在しており、これに注目した放射線医学総合研究所・脳機能イメージング研究開発推進室須原哲也室長らは、大脳皮質にあるD2受容体を標識物質を用いて測定した。

    その結果、統合失調症患者では健常者と比較して前部帯状回におけるD2受容体密度が低く、さらに密度の低下が強い患者ほど陽性症状が強いことを明らかにした。

    大脳皮質ではD2受容体を持つ抑制性の神経細胞がドパミン放出を調節するフィードバック機構を担っているが、統合失調症患者ではこのD2受容体密度が低いため、ドパミン神経伝達調節機能に障害があることが示された。

    また、須原らは大脳皮質にD2受容体よりも多く見られるD1受容体についてその密度を調べ、統合失調症患者の前頭前野D1受容体は健常者に比べて低下していて、D1受容体結合能と陰性症状との間に強い負の関連を認めた。

    参考文献:

    Stephen M. Stahl: Essential Psychopharmacology; Neuroscientific Basis and Practical Applications. 2nd ed. Cambridge University Press, 2000. (邦訳:仙波純一訳:精神薬理学エセンシャルズ;神経科学的基礎と応用、メデイカル・サイエンス・インターナショナル、東京、2002)

    画像テクノロジーが病態解明進める。Medical Tribune 36(40) 28-29, 2003.

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